食養内科

アポトーシスとネクローシス   印刷用【PDF】はこちら≫

 細胞が死ぬ場合、アポトーシスとネクローシスがあります。細胞が死ぬというのは、生物が死ぬことではありません。生物は生き続けています。その生物を構成している細胞の一部が死ぬ時、アポトーシスとネクローシスがあるのです。
 従って単細胞の生物には、アポトーシスとかネクローシスとかと言う状態はないのです。多細胞生物の場合に起きる現象です。
 もともと細胞の死はネクローシスと言われていました。ネクローシスは日本語で壊死と言います。凍傷や火傷で細胞が障害を受けると、細胞は死んでしまいます。これは壊死です。細胞が壊れる感じです。壊死は外部からの影響によって生じます。心筋梗塞は心臓の血管が詰まった時におこる病気です。血が流れなくなると、血が来なくなった領域の細胞は壊死を起こします。
 アポトーシスは細胞の遺伝子に組み込まれた自殺プログラムによって進行します。アポトーシスのスイッチが入ると自殺プログラムが動きだし自然な形で細胞の消滅が起こるのです。アポトーシスは「細胞自滅」「自爆死」「枯死」「自死」と訳されています。
 人体の細胞には分裂を繰り返している細胞再生系と分裂をやめた非細胞再生系があります。細胞再生系の細胞はアポトーシスの機構が備わっています。
 白血球、赤血球は分裂増殖を繰り返していますから、増殖した細胞の数だけ毎日死んでいるのです。皮膚の表皮になる細胞も分裂増殖を繰り返していますから、増殖した細胞と同じ数の細胞が垢となってはげ落ちているのです。

 アポトーシスは1972年、英国の病理学者によって発見されました。それまで、細胞の死はネクローシスしかなかったのですが、ネクローシスとは異なる奇妙な細胞死を見つけたのです。ネクローシスの場合は細胞が大きくなっているのに、アポトーシスは細胞が小さくなっているのでした。まったく違う死に方が見られたために発見されたのです(図)。

 生物が成長する時にアポトーシスが起こっています。オタマジャクシのしっぽが消えるのはアポトーシスです。人体において指ができる時に指の間の細胞がアポトーシスを起こして消えています。
 アポトーシスの特徴は小さくなることだと言いました。細胞が細(こま)切(ぎ)れになり細胞の中の核も細切れなります。細胞は壊れることなく、小さな細胞に分断されるのです。分断された細胞をアポトーシス小体と言いますが、アポトーシス小体は白血球のマクロファージに貪食されるか、又は周辺の細胞が貪食します。従って、アポトーシスを起こした細胞は死体がすぐ無くなるのです。アポトーシスは細胞群の中で時間的にも空間的にも散発的に起こり、短時間で完了します。
 アポトーシスを起こす細胞はその時期が来ると自分の細胞を分断するための蛋白質を合成しその蛋白質によって自分を小さな部分に分け、食べやすい形にして別の細胞に食べてもらうのです。アポトーシスはこのような死に方なので綺麗な死と言われます。
 ネクローシスの場合は死んだ細胞がしばらくそこに残っていますので、細胞が死んだことが理解できますが、アポトーシスの場合は死んだ細胞が消えてしまうため、細胞が死んでいるのが肉眼では認められないのです。
 ガンは分裂を繰り返している再生系の細胞でアポトーシスを起こしています。ガンが成長している時は分裂増殖が多く、ガンが退縮している時はアポトーシスが多くなっていると考えられます。

参考書 田沼靖一著 「アポトーシスとは何か」
平成25年2月26日 食養内科勉強会資料