食養内科

67 副交感神経の大事な役割    印刷用PDFはこちら>>

 自律神経は交感神経と副交感神経という二つの系統で内臓をコントロールしています。自律神経は、自分の意識と関係なく、勝手に内臓をコントロールしています。
 人が走ると心臓が勝手に速く拍動するようになります。
 人の健康を考える場合、自律神経が重要な働きをしていることを知っておく必要があります。
 交感神経と副交感神経については基本的な事を一つだけ知っておいてください。あとは順番に説明していきます。一つだけ知っておくことは、交感神経はエネルギーを使って活動することをコントロールしていて、副交感神経は体を休めて、エネルギーを蓄(たくわ)える働きをしているということです。


交換神経エネルギーを使って動く
副交感神経休んでエネルギーを蓄える


 又、交感神経と副交感神経は片方が強くなると片方が弱くなるようなスタイルで作用しています。

 自律神経の中枢はどこにあるか

 神経は中枢神経と末梢神経で成り立っています。中枢神経は頭の中と背骨の中にあります。そして末梢神経は骨の間から出て、体の隅々まで伸びています。
自律神経について大学で学んだ時に不思議の思ったことが一つありました。それは、副交感神経の中枢が頭と尻の方に分かれており、その間に交感神経の中枢があるということです。
 次ページの図を見てください。この図は副交感神経を描いたものですが、胸椎・腰椎から出ている赤い線が交感神経の出口です。
 副交感神経の中枢の一方は頭の中脳と延髄にあり、末梢神経は頭がい骨から4本出ています。副交感神経のもう一つは、脊髄の末端の仙骨あたりに在り骨盤神経となって出ています。
 このように副交感神経が2か所に分かれている理由を学ばなかったので、私はこのことをずっと疑問を持っていました。
 2、3年前に安保徹先生の本を読んでいた時、元々あった副交感神経の間に交感神経が割り込んできて二つに分けたのだと書いてありましたから、これは納得できると思いました。
 それで交感神経ができたのは、どうしてだろうかということを考え始めました。交感神経と副交感神経は、対立しながら働いているのだから、同時にできて、又同じような場所にあればいいのじゃないかと、単純に考えていました。
 考えているうちに段々と謎が解けてきました。それは生物の発生を考えているうちに分かってきたのです。
 生物が原始的なものから高等な物へ進化していく過程を系統発生と言います。
 最も原始的な単細胞生物はアメーバです。アメーバは水の中にいますから、水の中で流れに任せて漂っているのです。エサは水の中にありますから、それを食べて要らなくなったものを排泄しているのです。
 生物の最も基本的な働きは、食べるということと排泄するということです。これが副交感神経の仕事です。生物が生きていくためには食べることと、使い切った物を捨てることが最も重要なことで、これをスムーズに行けば生命を維持することができます。
 だから原始的な生物は副交感神経だけあれば用を達したのです。では、そこになぜ交感神経が必要になったかということを考えていた時に、私は「動きたい」という気持ちが現れたために体を長くするという方向が出てきたのだと考えたのです。

 移動したいために体を長くしたのか

 原始的な生物はほぼ球形をしていて、球形であれば自分の体をくねくね動かしてみても、思うように移動することができません。体をくねくね動かして移動しようとすれば、体を長くすれば良いのです。
 それで私が思ったことは、水の中に漂ってそばにあるエサを食べていれば何不自由なく生きておられるのですが、それだけで満足できなくて、生物に自我のようなものが生まれ、じっとしているのは面白くないとか、同じものではなく、もっといろんなもの食べてみたいとかという気持ちが湧いてきて、動きたいという気持ちが起こり、その延長上に体を長くすればよいという発想が生まれ、体が長くなったのだと考えました。
 そのため、副交感神経が頭と尻尾に分かれその間に交感神経が割って入ったと考えるとすると筋が通ると思ったのです。

 交感神経の役割

 交感神経の仕事は、生物が動いてエサを探しに行く事をサポートしています。
 交感神経の役割は、エサ取り行動のコントロールです。猛獣が獲物を追いかけるのも、エサ取り行動です。人が田畑を耕して農作物を作るのもエサ取り行動です。人が金融商品を作って、銭を儲けるのもエサ取り行動です。
 エサ取り行動は生物の喜びです。それでもエサ取り行動は危険がついてきます。動物が獲物を追っかけているのは良いでしょうが、追っかけていると自分がもっと大きな動物に食べられてしまう危険もあります。

 交感神経の役割は増加していく

 体を移動させたいと思った時、長くなって体をくねくねと動かすと一方の方向へ進んで行きます。魚はそうやって動いているし、蛇も体をくねくねして進んでいます。
 前に進もうとすると目が必要になってきます。目がないと物にぶつかるからです。魚も蛇も目を持っています。目も交感神経が支配しています。交感神経は瞳孔を開いて見やすくする働きを持っています。
 動物が体をくねらせながら前に進んでいくと、今度は舵取りが必要になります。すると魚はひれをつけて調節するようになります。
 このように新しくできるものはすべて交感神経の役割になります。交感神経の仕事はどんどん増えて行き、副交感神経の仕事は裏方のような立場になるのです。
 動物が海の中にいる時は体をくねらすことで進むことができますが、陸上に上がった動物は体をくねらしても進むのはわずかですから、脚を持つようになります。初めはワニのように脚を体の両側につけていたのですが、これではスピードが出ないので進化すると足を腹の下につけることによって、体幹は左右の運動から上下の運動に変えて段違いにスピードを上げることができました。
 陸上で生活するには眼の外に耳も発達させて自分の周囲の音を聞きエサ取りの活動を行うようになりました。脚が出て動くようになると、運動神経が必要になります。そして陸上で生活をすると、様々な障害があり知覚神経も必要になります。
 運動神経や知覚神経は後からできたものですが、体の全体に張り巡らされており、太い神経ですからわかりやすく、解剖してもすぐ分かる神経です。
運動神経や知覚神経は意識が覚醒してる時に働いています。これらの神経はまとめて脳脊髄神経と言いますが、この2つの神経は交感神経の活動時に働いていることになります。
 大脳皮質の後ろの方に手足の筋肉をコントロールする部分があります。大脳の後頭葉は動物が足を使って動き回るために発達したのです。
 四つ足動物の場合、エサ取り行動もまだ単純です。腹が減ったらエサを取りに行き、腹が満足したら食べることを止めます。
 動物が進化して、前の足が手になり、後ろの足だけで立つようになった人間の場合はエサ取り行動も単純なものではなくなります。
 人間は大脳皮質の前の部分が発達し、前頭葉ができます。ここは人間らしい所で、記憶したり、考えたり、判断したり、決断したり、言葉を使って知的活動をするようになります。
 ですから、大脳が人体を動かす中枢の司令部のようになりますが、眠ってしまうとこの司令部も機能を中止します。
 眠ってしまえば、副交感神経の支配領域が活動体制に入りますから、大脳は休憩です。大脳が働かなくなると交感神経は全般的に休みですから、副交感神経が働き体の調整を始めるのです。眠る態勢や休む態勢になったらアレルギー症状が出てくるのは、体の調整を始めるからです。
 昼間よく働いてしっかりエサ取り行動をした人は、夜ぐっすり休んでしっかり体を調整しなくてはなりません。
 このように交感神経と副交感神経の関係を行っていくと、今までの自律神経に対する見方が変わってきます。
 今までの考え方は、交感神経と副交感神経が対等の関係で、バランスをとっていると見ています。両者は拮抗的で片方が優位であれば、片方は休んでいるという関係です。
 現実的にはこの認識で問題ないと思いますが、もう少し詳しくみていくと、副交感神経は常時働いていて、交感神経が活発になると、副交感神経は遠慮しているという感じです。
 こんな感じで見ると、副交感神経というのは、奥ゆかしいと言うか、けなげと言うか、黙って裏方として、人体を支えコントロールしていることが分かります。
 交感神経は、我欲が発現している世界です。意識が覚醒しているときに働いています。交感神経の緊張が続くと、体は消耗してしまいます。ですから人体は夜眠るという状態を作り意識活動がストップすると、副交感神経は“わが意を得たり”という感じで人体の修復や調整を始めるのです。そして寝ている時に大まかな調整が終われば、また明日、人体をスムーズに活動できるということになります。


平成25年12月2日
著作 長岡由憲