食養内科

    10 登校拒否と家庭内暴カ         印刷用【PDF】はこちら>>

 東京都医師会雑誌 '97年8月号(第50巻 第4号)にあった文章です。私自身も家庭内暴力の患者を診ることがありましたが、この文章は教えられることがありました。現在においても参考になると思うので紹介します。
平成26年3月17日
文責 長岡由憲

 登校拒否と家庭内暴カ
床鍋博人

1、父親中心の家庭にする
 Mさん (14歳、女)中学2年
 初 診 平成8年10月30日
 症 状 学校での友達関係がうまくゆかず、いじめにあい、無視されるようになった。友達のこと、試験のことを考え、胸部圧追感、息苦しい、疲れ易い、などの症状を訴えて母親と来院した。
 診断名 自律神経失調症、軽症うつ病。
 対 応 母親に『父親中心の家庭にする』ことの大切さを話し、次回、父親と3人で来院するように言った。
父規は、働くだけの人ということで、朝は早く、夜遅い、妹がいるが、子供のことは全部母親が主体になって育ててきた。
次回、父親が一緒に来院したので、一家の中心は父親であり、子供のしつけを母親にまかせるのではなく、父親が先頭に立って、家族を引っ張ってゆく気迫と、家族に対する思いやりの心の大切さを話した。
 治 療 塩酸イミプラミン、マイナートランキライザーにより治療した。
 経 過 治療4週間ぐらいで、友達のことをクヨクヨ考えなくなり、気持ちが楽になった。修学旅行にも参加し、毎日、学校に通っている。平成9年1月には、くすりをのみ忘れるほどよくなったという.
 考 察 本例は、中学2年の本人の父親に来院していただき、子供にとって父親の存在の重大さを認識してもらった.
高校進学のため、塾での面談に本人が父親と一緒に出席し、家にいる時は知らなかったが、外では、お父さんにこんな立派な面があったのかと、父親を見直したという。塾の帰りには父親が車で迎えに行くようになった。塩酸イミプラミンの効果と相俟って、登校拒否は防止されたと思われる。
後日、母親が来院して『今までは母親だけの考えで子供を育ててきたが、高校受験というような問題になると、父親のカが必要だと感じた』と述べられた。
2、家庭内暴力は尊敬の対象がないことによる
 本来、子供は父親という、こわい存在、又は尊敬の対象をもつことによって、精神の健全な育成がなされる。父親がこわい存在でないとき、あるいは尊敬の対象でなくなるとき、子供は自分の感情を抑制すべき、なんらの方法も失ってしまい、思春期にみられる肉体の変調も手伝って、きわめて不安定な精神状態に追い込まれてしまう。こんなとき正しく導ける師にめぐり会えれば、家庭内暴力は未然に防がれるのであるが、そのような師に会うことなく、親自身が、そのような精神状態を理解し導くことができないとき、子供は、自分の精神不安を破壊的行動と親に対する反抗的態度ととることによって適応しようとするのである。ある時は、親孝行することで、精神の安定を見つけようとする。家庭内暴力の子供が概して気がやさしく、時に親孝行になるのはこのためである。
 しかし、これは全く一時的なもので、わずかな欲求不満から、再び精神不安をきたし、破壊的行動と親に対する反抗的態度をとってしまう。家庭内暴力の子供は、その心情あわれむべく、いい子になりたい、しかしなれない、その葛藤からくる苦しみは親以上のものがあるといえよう。
3、家庭内暴力の子供は迷い苦しんでいる
 医師やカウンセラーで、子供の暴力に抵抗しないように言う人があると聞いている。これは、とんでもない間違いである。子供は迷い苦しんでいる。そんな子供が自覚するのを待つには無理がある。父親は、子供のこの苦しみを理解し、愛の心ゆえに叱るべきときには命がけで叱る。子供は叱ってくれる人を待っているのだ。
 しかし、一旦子供に対する父親の権威を失ってしまったら手遅れである。
 金属バット殺人で、杜会的救済として親子は切り離すべきだったと平成9年6月3日付毎日新聞は報じている。
(武蔵野市医師会)