食養内科

70 漢方は8割の治療を目指す   印刷用【PDF】はこちら>>

 私が東京に来たのは漢方の勉強をするためでしたから、その頃は漢方の勉強会によく出席していました。その時、教わったことで印象深いことがありました。それは、その頃の漢方の重鎮で菊谷豊彦先生の話です。
 漢方の治療は8割を治すことを目標にしてするのであると言うのです。なぜ10割ではないかと言うと、人の知恵は不完全であるから10割を目標にすると危険であると言うのです。8割を目標として治療し、あとの2割は自然に任せた方が良いのだと言う考え方です。
 この考え方は、それまでの私の常識をくつがえした所があり、さすが漢方はスゴイものだと感心したものです。しかし、この話はその後どこでも聞いたことは無いし、本で読んだこともありません。菊谷先生はどうしてこんなことを知っておられたのでしょうか。
 学校へ行きますと、たいていはテストと言うものがあって、それで100点を取ると優秀であると認められ、生徒は100点を取ろうと努力すると思います。私は長年そう思っていました。100点が一番いいことだと思ってきましたので、この8割目標と言う考え方は新鮮で、まったく新しい発想と思えて驚きでした。
8割目標と言うのは妥協して8割とか、10割をあきらめて8割にすると言う意味ではないのです。8割を目標として行うことがベストであると言う意味なのです。
 治療も人間が行うことであるから8割を目標とするのが無難と言うか妥当な線であると言う意味なのです。
 このような考え方が正しいのかどうかについては議論があるでしょうが、私は納得したためにこの考え方をもらっているのです。外来で患者さんに食事指導をする時、8割を目標にして目標にして、その8割を実行しなさいと言っています。そうすると100%から考えると0.8×0.8で64%になります。こんなに低くて良いのかと思われるでしょうが、6割以上であればよいと思っているのです。
 人は体に良いことと体に悪い事と両方するのですが、体に良い方が半分以上あれば、体は良くなると思っているのです。ですから60パーセント以上で良いのです。


平成26年4月14日
著作 長岡由憲