3 日野式食養生とマクロビオティックの違い

 

 日野式食養生を生態学的栄養学と言います。桜沢式の食養生をマクロビオティックと言います。日野 厚先生は桜沢如一氏の弟子でありましたが、桜沢式食養の問題を実感し危険性のない食養を研究し続けられたのです。ですから日野式食養生とマクロビオティックは似て非なるものなのです。  日野式食養生の特徴として、塩分が少ないことがあります。少ないと言っても桜沢式に比べて少ないのであって、必要量としては適量と考えればよいのです。桜沢式のマクロビオティックでは玄米にごま塩をかけることを勧めています。 日野先生も若い頃、桜沢式の食養生を行っていた時、塩をかなり多めに摂っておられたようです。そのために塩の取り過ぎで健康を害したと感じ、その後塩の少ない食事を始められたのです。  いかに多くの塩を摂っていたかについて、日野先生は著書の中で述べておられますので、その文章を紹介します。これを読むと桜沢式のマクロビオティックと日野式の生態学的栄養学の違いが、ある程度分かると思います。  

「人間の栄養学を求めて」自然社、昭和52年出版より

偏った食養法に固執して死にかけた著者の例。
私が民間の食事療法で命拾いをしたことは前に書きましたが、その後のことを述べますと――
初めのころ、かなりの長期間塩気を大変にきかして、油気をきかして、副食を少なくして、菜っ葉類を食べないで根菜類を食べて、たん白質も少なく、カロリーも少ない、という状態を続けていました。ある期間までは、それまでのいろんな症状が劇的に軽快して、いきました。ところがそのうちに、生まれてから、まだ経験したことのないような症状が出始めました。27~28歳の時に、皮膚病が出てきて頑固に続いたり、黄疸になったり、その後腎臓病を病むとか、真っ赤な血尿が出るとか、胃・十二指腸潰瘍を繰返すとか、いろんなことが出ました。非常にアレルギー体質になり、気が短くなってきました。どこから見てもこれは、塩気と油の摂取過剰、緑葉野菜あるいは蛋白質の摂取過少などが影響した可能性が大と思われます。 そういう、いろんなことが出たのですけれども、まだ自分の実行の程度が足らないのだろう、塩のきかせ方が足らないのだと思って、ジャカジャカさらに塩をきかせました。ひどいときには、みそ汁でも箸で食べられる程に濃いみそ汁です。汁の実を箸で食うならわかっているけれども、みその中に水が少し入ったようなものです。ですから、恐らく1回にみそを50gぐらいなめたのではないでしょうか。そんな食事を2、3日していれば、しゃべれなくなってきます。それから体が全然動かなくなってきます。最長1週間ぐらいで、もうどうにもならない。水を飲みたいけれども、水を飲みに歩いていけない。這って水道まで行って、1度に1升か2升飲んでしまう。飲んでいるうちに体が動くようになる。 そういうことを長く繰り返していました。そして何と自分は意志が弱い者だろうと歎くわけです。男のくせに何だ、これぐらいのことをコントロールできなくて、何で男の仕事ができるかと、そういうふうに本当に苦しみ通しました。 精神的にも肉体的にも。そのように苦しみ続けても、なおかつ、塩気をきかせようという、そのような無茶苦茶な姿勢が間違いであるあるということに、長く気付かなかったのです。盲信している時には、非常にむずかしいことのようですね、自分の姿を振り返えるということは……。 それで本当に困り切っていました。バカでもあまり頭を打つと覚めるときがくるもので、次のようなことがあったのです。腎臓出血が1ヵ月続きました。真赤な尿が。私の師匠の森田教授が、腎臓摘出以外にないだろうといわれる。さすがに私も寝込んでしまいました。血液が出てくるのでどうしようもない。家でねているので、だれも来てくれない。仕方がないので自分で静脈注射を打ちました。ビタミンKを注射したのです。私は1日尿量中の赤血球、白血球、円柱、上皮細胞等を全部計量していたわけです。1日の尿量中に赤血球が何十万、何百万出ているかを、「アディスの計算法」という方法で計算していました。 ところが、ビタミンKを打ったら、1本で血尿が止まってしまったのです。そこで考えました。ビタミンKで急激に血尿が止まったとはどういうことなのかと。どうもこれは緑葉野菜や繊維が足らないように思える。それから、そういうものをガバガバと食べ出したら、潰瘍だとか、皮膚病だとか、アレルギーとか、いろんなものがだんだんによくなってきたというわけです。


以上が日野先生の文章です。 文章の始めに「私が民間の食事療法で命拾いをしたことは前に書きましたが」という所がありますので、その文章を次に紹介します。

私は民間食事療法で救われた
私は生来病弱で、ことに下痢しやすかったのですが、中学1年以来著しく悪化して、ついに3年半の間休学することになりました。その間、医師の指示に忠実であることは医師も感心する程でありましたが、症状は悪化するばかりでした。ついには口を開くのも困難な程衰弱し、精神的にも苦悩を極め、心身両面で生死の境を彷徨するようになりました。 肉体の回復はもはや望むべくもないが、せめてもう少し心の安らかさを得て死にたいと思い詰め、この衰弱しきった状態で断食を行いました。同時に、長年片時も離さなかった薬と縁を切り、その後引続き、教えられた民間食事療法をしたところ、精神的に180度転換したばかりでなく、長年の難病が雲散霧消してしまったのであります。

民間食事療法の科学的研究を決意
このようにして私は、食べ方と心身の健康のつながりの極めて重大なことを、生命の瀬戸際で味わい知ることができました。以来、かなり多数の断食療法や民間食事療法の実行者をできるだけ客観的に観察し続けましたが、現代医学でてこずる難病でさえも軽快して行くことがあまり珍しくない反面、かえってあまり難病でもなさそうな状態の人々が、これらの療法の実行後に、大病・難病にとりつかれたり、悪化したりするかのように見えることも間々ありました。 しかし、これらの一見古色蒼然とした、主として経験と主観のみに頼り、信仰や信念にのみ依存して来た傾向の強い、民間の食事療法に捨て難い利点もあることは、何としても否定し難いことと思われました。何とかこれに科学の光を当て、出来る限り実証を土台として、そのあり方を厳正に客観的に批判検討し、現代栄養学・現代医学・民間食事療法・民間療法の総てを昇華して、真に人間の健康達成に役立つ新しい総合~全体医学~栄養学の建設に挺身することをライフ・ワークとしようと決意したのであります。


 以上で日野先生の文章は終わりです。桜沢式の食養生では、塩分と油分が多いという特徴があります。どちらも摂り過ぎは健康を害する要因となります。
 ご用心!
 ご用心!

平成22年2月28日

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