疲れやすい。肩が凝る。腰が痛い。便秘する。時々腹が痛くなる。風邪をひき易い。朝起きにくい。種々の症状があって医者に行き血液検査をしてもらっても異常がなく、医者から大丈夫と言われることがあります。肝臓、腎臓、その他に異常がない時、内科医は自律神経失調症、あるいは不定愁訴症候群という病名をつけます。この二つの病名は同じ内容と考えて問題ありません。
これはどんな病気でしょうか。自律神経失調症というのは、自律神経が正常に働いていないという意味の病名です。自律神経というものは、胃腸等の消化器、心臓血管の循環器、そして、泌尿器、呼吸器とすべての器官を調節している神経です。
自律神経は交感神経と副交感神経の二つの系統で各器官をコントロールしていますが、一般に、活動する時は、交感神経が働き、休む時は副交感神経が働きます。すなわち、エネルギーを使う時は交感神経、エネルギーを貯える時は副交感神経ということになります。したがって昼間は交感神経が優位で、夜間は副交感神経が優位です。この神経の働きが悪くなるといろんな症状がでてくるのです。
次に不定愁訴症候群という病気はどんな病気でしょうか。これは症状、訴えが多くあっても、検査で異常所見がなくて、何何病という病名がつかないという意味の病名です。病名としては適切なものではないので、診断がはっきりすれば消えていくものです。
なぜこのような病気になるのでしょうか。色んな考え方があります。第一に、これは神経から来るのだという説です。神経が細かすぎて、いろいろ考え過ぎるから症状がでるというもので、一種の神経症(ノイローゼ)という説です。又、体質が過敏だから症状が出るのだという説もあります。
この病気は女性の更年期障害に似ているから、ホルモンの異常と関係しているという考えもあります。又、症状が昔あった脚気に似ているから、ビタミンB1の欠乏が関係しているとも考えられています。もう一つの考え方としては、もっと詳しく検査をすれば、何か異常が出るはずであるという考え方もあります。
私がこの病気に関心を持っている理由は、私自身が学生時代にこの病気に近い状態だったからです。その時は病気とは思っていませんでしたが、冒頭に書いたような症状があり困っていました。後になって、あれは「自律神経失調症」であったのだと理解した訳です。学生の終わり頃になって玄米食とか食養生とかを、本で読んで我流でやってみましたが、症状は段々と改善していきました。そこで、この病気の原因や治療について、私が考えたことを述べてみます。
私の場合、生まれながらの性格のようなものが病気の根底にあるように思います。体質というか、遺伝的素因のようなものです。それに加えて、生まれてからの食生活が影響しています。日常生活面で問題点も影響していると思います。大きな原因としては食生活です。私がこういう状態であったということは、今考えると大変恥ずかしく、又、恥ずべき状態であったとショックを受け、反省をしていますが、患者さんの中に私と同じ様な経験をしている人があれば、私の体験、理論を聞いてそれを参考にして、困った状態を治してもらいたいと思います。
私の食生活の一番の問題点は甘い物の多食だと思っています。砂糖類、菓子類、果物類、いずれも甘い物です。あんこものは特に好きでした。少なく食べておけばよかったものを食べ過ぎていたのだと思います。酒の好きな人が、酒に飲まれるように、甘い物好きが、甘い物に食べられたのです。
白砂糖が体に悪いと本に書いてあったので、それを知ってからは、黒砂糖の菓子や水飴をせっせと食べていました。誠に恥ずかしい話です。
甘い物の多食は、なぜ自律神経失調症のような状態になるのでしょうか。砂糖はビタミンの乏しい食品です。カロリーは十分にあります。したがって、これを多食するとビタミンの欠乏症になります。欠乏といっても完全な欠乏ではなく、不完全な欠乏です。又、砂糖が体の中で使われる時、ビタミン類を使うので、体の中に貯えてあるビタミン類は増々少なくなります。
ビタミンは蛋白質と結合して酵素になります。酵素は人体の生命活動の大部分に関わっていますから、ビタミンの欠乏は、酵素の機能低下になり、内蔵、その他の器官の働きが弱まることになります。神経も酵素により機能が維持されていますから、ビタミン欠乏は神経機能にも障害を及ぼします。
神経には運動神経、知覚神経、自律神経があり、脳も神経の集まりであるから、ビタミンの欠乏は、何らかの影響を受けることが考えられます。
自律神経失調症というのは臓器そのものの問題ではなく、それをコントロールする神経あるいはホルモンの障害ですから、血液で臓器の異常を検査しても正常に出てくるのです。
自律神経失調症はさまざまな要素がからみあって起こってくると考えられますが、その中の一つである食生活、特に食物の内容、栄養面について考えてみます。
自律神経失調症を食べ物から考えていくと脚気ということになります。現代人の脚気様症状はビタミンB1欠乏だけでなく各種ビタミン類あるいは、ミネラル類の複合的な欠乏症の可能性があります。自律神経失調症という病名がつく前は、脚気様症候群といわれていました。この病気は食べ物との繋がりが大きいのです。
自律神経失調症が精神的なことやストレスの影響を受けて起こることは確かでしょう。そういう影響を受けても、肉体の異常まで来ないように、食生活を改善することによって、人間の体を本来の機能を発揮できるように作り変えることが、この病気を治す上で大切な事です。
私の場合は、甘い物、砂糖、果糖などが問題でしたが、これと同じ系統の物に油とアルコールがあります。この三者はいずれも元素で言うと、C、H、O、すなわち炭素、水素、酸素で出来上がっており、エネルギー源となるもので体を調整する働きのあるビタミン類は欠乏した食品です。したがって、油やアルコールも、これを過度に摂取すると体調を狂わすことになります。
自律神経失調症に対して、いかに対処するか、三つの方面から考えてみました。
《精神面》
1、昔のことをくよくよと後悔しない。
2、先のことをあれこれと考えて心配しない。
3、努力すれば、自分の力で治るんだ、という自身を持って行動する。
4、悪くなることを考えないで良くなることだけを考えて、毎日良くなるような事を実行する。
5、困難な事に対して、逃げ腰でなく積極的に解決していこうという気持ちを持つ。
《日常生活》
1、早寝、早起き。規則正しい生活をする。夜更かしをしない。
2、大小便に行きたい時、我慢しない。
3、正しい姿勢を心掛ける。
4、適度な運動を毎日するよう心掛ける。
5、正しい呼吸法を心掛ける。
6、冷暖房はほどほどに。
《食養生》
1、甘い物、砂糖類、果物類を少なくする。
2、油類、アルコール類を少なくする。
3、緑黄色野菜、海草類を積極的に食べる。
4、柔らかい食品、液体の食品(コーヒーやジュース類)を少なくし、固めの食品を多くする。粉食(パン類やめん類)より粒食(米のご飯)を多くする。
5、小魚を丸ごと、頻回に食べる。
6、主食は玄米あるいは五分搗米にして、雑穀(麦など)を入れる。
7、日野式食養生の20カ条を続ける。